メラン子。 -土夜公平 第一回自主監督作品-

 

映画「メラン子。」について

2009年5月30日、土曜日。
突然「俺は自主映画を撮る」と言い出した土夜が、SLIGHT LIGHTS PRODUCTIONSのサイトウ氏を呼び出した。
「音楽の作り方を教えて欲しい」

何で突然撮ることにした?

土夜(以下:つ)「すんませんいきなり」
サイトウ(以下:サ)「いいよここおごってくれれば。音楽でしょ」
つ「フリー音源でもいいのはあるんですけど、曲自分で作りたいんですよ」
サ「電話しながら、ヤフオクでいきなりMIDIキーボード落としてたもんね(笑)」
つ「届いたの、部屋にあったあれっす」
サ「で、なんでまた撮ることにしたの? 俺の影響でしょ」
つ「まー影響やきっかけはいろいろあるんですけどね。時期が来たんじゃないですか」
サ「時期?」
つ「昔から、自分の中身で蠢いてるもの撮りたいっていう想いはあったはずなんですけど。普段の仕事の中で忘れがちじゃないですか」
サ「俺はそんなことはないけどね」
つ「ずっと編集屋やってきて。最近はwebデザインなんかが仕事の中心なんですけど、けっこう動画の仕事も入ってきて。給料もらいながらそこそこ好きな仕事できるんだからいいじゃんって思っちゃうんですよ」
サ「あー、まずいね」
つ「はい。ぶっちゃけ、どん詰まりにきてた感じでした」
サ「で、原点を見つめなおしてみたみたいな?」
つ「そうっすねー。何がしたかったんだっけ、って考え直して。この『メラン子。』は昔書いた小説なんですけど。この時の汚いモノローグをそのまま映像に落とし込んでみたくなって」
サ「最底辺だよね、この主人公」
つ「昔は、メンタルの波激しかったですから」
サ「鬱状態の時の方が筆はノるんでしょ?」
つ「ネガティブパワー全開で、内の内まで篭もって吐き出します(笑)」
サ「基本、根暗だよね」
つ「その上、言い訳がましくてうじうじしてるんですよ。いつまで経っても「まだそういう時期じゃない」みたいなわけわかんないこと言って、先延ばし先延ばしにするんです。昔付き合ってた子が、「車走り出してからガソリン探す」みたいな超特攻タイプで。結局俺を含め100人以上巻き込んで、1本映画作り上げちゃったんだからすごかったですよ。年上だったんですけど、今俺がそのときの彼女と同じ歳になって。で、ふと周り見渡してみると、状況整いすぎるくらい整ってるんじゃないかと」
サ「撮影編集自分でやれるんだから、さっさと撮っちゃえば良かったんだよ」
つ「仕事で作りまくってましたからね。それがまたそこそこ楽しいのが厄介なのかもしれません。予算や納期、作る目的がはっきりしてる方が燃えたりするんですよ。逆にフリーダムだと何していいかわかんない、みたいな」
サ「好きなこと仕事にするってのも、難しいよね。好きにやってるつもりが徐々に牙取れて、気付かないうちに細かく妥協繰り返してたりする」
つ「本当そんな状況です」

一本にまとめるつもりがない?

サ「これ、原作の小説も未完成だよね」
つ「そうですね」
サ「脚本どうなってるの?」
つ「頭から細かく切って、さらに部分部分を膨らまします。一本にまとめるつもりもないんですよ」
サ「ドラマ仕立てにするってこと?」
つ「そういうわけでもなくて。どちらかというと、連載マンガみたいなノリですかね。例えば昔のドラゴンボールなんて、先考えて描いてるわけじゃないじゃないですか」
サ「唐突に新キャラ出たり、敵が味方になったり、サイヤ人も後付けだよね」
つ「そうそう、作るノリはそういう感じです。到着点は決めません」
サ「まさに、「走りながらガソリンを」」
つ「そういうやつです(笑)」
サ「仕事とは正反対だ」
つ「仕事だと、とにかく金出してる人が求める結果を出さなきゃいけないじゃないですか。今回は、全く逆です。出発点が俺の脳髄、そこからひたすらに膨らませて、収束できる部分に関しては収束させます」
サ「原作からしてそんな感じだよね」
つ「そもそも、まとめるって必要なことなのかと思いますよ。いらんでしょ。もっと連綿としてていい。別に話にオチがつくのを求めるわけじゃなくて、作り手と受け手で不思議な時間を共有できる、そんなものにしたいんです。理屈じゃないとこですけど」
サ「一応受け手は意識するんだ」
つ「意味不明なアートは大嫌いですから。受け手を置いていくんじゃなくて、ちゃんと振り回しにかかります」
サ「土夜くん、基本低俗だもんね」
つ「低俗も、徹底すれば歴史に残るんじゃないですか?」

編集逆算の現場。

つ「自分基本が編集とデザインなんで」
サ「うん」
つ「撮影は全部編集からの逆算で撮ります。たぶん普通の現場とは大分違ってくるんじゃないかと。「あれを撮る」は最低限で、それより現場のノリや思い付きを中心に置きます。撮影というより、素材集めと言った方が正しい気もしますね。集めた素材を机上で脳とぶつけあって、生理に訴えかける組み合わせを生成する、という作り方になります」
サ「追撮は?」
つ「多いでしょうね(笑) 編集を機軸に置きますので。編集中にぱっと思いついたものが命です。絶対編集してて出てくると思うんですよ、「ここはどうしてもこういう画が欲しい…」みたいな欲望が」
サ「出演者はいい迷惑だ(笑)」
つ「なるべくご迷惑かけないようにはいたしたいです(笑)」
サ「スタッフは?」
つ「なるべく少人数体制で。さっき言った「時期がきた」ってのはそのあたりもあります。周りに頼れる人が増えてきました」
サ「ああ、俺」
つ「頼りにしてます。俺の現場は絶対楽しいですよ。ピリピリした現場は好きくないので。自分の脳を最大限拡張するには、場が楽しいことが大前提です。楽しくない現場からおもしろいもんができるわけないと思いますんで」

【続きます(2009.5.31)】

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